ブラックホールを観測して世界初の写真を撮る
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最終更新日:2019/01/13
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4月5日から巨大ブラックホールを世界7か所の電波望遠鏡で観測して世界発写真でとらえる日米欧などの国際共同研究が、始まっています。
ブラックホールは光が脱出できないコンパクトな暗黒の天体なので目で直接捉えることはできません。
ブラックホールの周囲を旋回する明るい円盤状のガスを一斉に観測することで、望遠鏡の分解能を高めて暗黒の天体の姿を浮かび上がらせる計画です。
ブラックホールの有無ついては状況証拠しか掴まれていていないので、成功すれば、ブラックホールの存在を世界発直接的に写真として確認する快挙となります。
(写真は中央の黒い影がブラックホール。周囲の非対称にガス円盤が明るいブラックホールの理論的な想像図です。)
観測対象は、銀河系の中央付近にあるとみられる巨大ブラックホールです。
このブラックホールは地球からは約2万6000光年(1光年は光の速度で走って1年を要する距離で約9兆4600億キロ・メートル)離れています。
質量は太陽の約400万倍、直径は太陽の17倍の1200万キロメートルと推定され、銀河系の成り立ちに重要な役割を果たしていると考えられています。
ブラックホールの周囲の円盤状のガスは強い重力の影響で高速で回転しながらブラックホールに引き込まれていて回転摩擦で100万度を超える超高温になり明るく輝き、同時に強力なX線を放射しています。
Contents
▼ブラックホール観測で世界初写真 目次
- ブラックホール観測で世界初写真 ブラックホールとは
- ブラックホール観測で世界初写真 ブラックホールをみる望遠鏡は
- ブラックホール観測で世界初写真 いつ撮影されたブラックホールをみれるのか
- ブラックホール観測で世界初写真 ブラックホールをみる望遠鏡の日本の功績は
ブラックホール観測で世界初写真 ブラックホールとは
人工衛星が地球から脱出するのに必要な速度は秒速11kmです。さらに重力が大きい太陽となると秒速620kmの脱出速度が必要になります。
光速である秒速30万であっても脱出できない程の超重力を持つ天体がブラックホールです。
ドイツの天文学者シュヴァルツシルトはアインシュタインの一般相対性理論を解いてブラックホールの存在を予言するブラックホール解を発見しました。
宇宙には太陽質量の10倍~10億倍もの質量を持つブラックホールの存在が観察されています。
現在ブラックホールは恒星ブラックホール、超大質量ブラックホール、中間質量ブラックホールの3種類が存在すると言われています。
★恒星ブラックホール・・・・超新星爆発によって生まれたブラックホールで太陽の30倍以上の質量の恒星でないと、重力崩壊が進行しない為、ブラックホールにはなりません。
★超大質量ブラックホール・・太陽の105倍から1010倍程度の質量を持つブラックホールで我々の銀河系を含む[ほとんどの銀河の中心には、超大質量ブラックホールが存在すると考えられています。
★中間質量ブラックホール・・質量が恒星質量ブラックホール(質量が太陽質量の10?数十倍)よりも著しく大きく、かつ超大質量ブラックホール(質量が太陽質量の100万倍以上)よりも遥かに小さいブラックホール。
2012年、2009年に発見されたブラックホールHLX-1が、初めて中間質量ブラックホールと確認されています。
ブラックホール観測で世界初写真 ブラックホールをみる望遠鏡は
ブラックホールの周囲ガス回転円盤から放射されるX線を電波望遠鏡で観測します。
ブラックホール自身は暗黒であってもガス円盤の中に浮かぶ黒い影としてブラックホールを見ることができます。
巨大ブラックホールとはいっても距離が遠いので、きわめて空間分解能が高い電波望遠鏡が必要です。
ブラックホールの影を見るにはサブミリ波が適していることがわかっています。
銀河系中心の超巨大ブラックホールは地球から見ると約45μ秒角しかありません。
10μ秒角は月面に置いた1円玉を地球から見たときの大きさで38万km先の2㎝です。
そこでノーベル賞にも輝いた技術、電波干渉計がその解決策です電波干渉計は複数の望遠鏡を組み合わせることでひとつの巨大な望遠鏡と同じ空間分解能を達成しようとするものです。
大雑把に言うと空間分解能は望遠鏡間の距離で決まります。
アルマ望遠鏡は66台のパラボラアンテナからなるミリ波・サブミリ波領域では世界最大の基線長を誇り、分解能・感度ともに世界一です。
このアルマ望遠鏡が加わったことで、電波干渉計の解像度は10倍になり、月面に置いたゴルフボールを見つけられるレベルになりました。

4月5日から巨大ブラックホールの撮影は10日間行なわれましたが観測期間中、実際に観測できたのは5夜だけでした
ミリ波は、銀河の中心にある高密度のガスと塵を貫き、途中にある物質の影響をあまり受けずに地球に届くメリットがあります。
しかし、水は電波を吸収・放出するため、地球上で雨が降ってしまうと観測にならないのです。
すべての観測地点で好天に恵まれる可能性は、ほぼゼロなのです。

ブラックホール撮影に使われた電波望遠鏡
★米国 ハワイ ジェームズ・クラーク・マックスウェル望遠鏡 サブミリ波アレイ
★アタカマ・パスファインダー実験 アルマ望遠鏡 チリ 観測に用いる波長帯は1cm(31.3GHz)から0.3mm(950GHz)である
★南極点望遠鏡
★IRAM30m望遠鏡 スペイン
★大型ミリ波望遠鏡 アルファンソ・セラーノ メキシコ
★アリゾナ電波天文台 サブミリ波望遠鏡 米国
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ブラックホール観測で世界初写真 いつ撮影されたブラックホールをみれるのか
地球規模の5日間の観測を終えた天文学者たちがブラックホールを撮影できたかどうかを知るまでには、しばらく待たなければなりません。
各天文台の観測データの量は膨大で、オンラインで送ることはできません。
すべての望遠鏡からの情報(ノートパソコン1万台分の記憶容量に相当する)は、1024台のハードディスクに記録されました。
これらのハードディスクは、ヘイスタック観測所とマックス・プランク電波天文学研究所(ドイツ・ボン)にある、事象の地平線望遠鏡データ処理センターに郵送されます。
しかも、南極点望遠鏡のハードディスクは、10月末に南極の冬が終わるまでは発送できないのです。
データ処理センターでは、8カ所の天文台から届いたタイムスタンプ付き信号を照合します。
国際協力で観測して撮影した努力が実を結んだかどうかは、数カ月後にならないとわからないとのことです。
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ブラックホール観測で世界初写真 ブラックホールをみる望遠鏡の日本の功績は
チリ・アタカマ砂漠に建設された大型電波干渉計のアルマ望遠鏡は66台のパラボラアンテナからなるミリ波・サブミリ波領域では世界最大の基線長を誇ります。
分解能・感度ともに世界一です。
2002年から建設が始まり、2014年6月に全てのアンテナが到着しました。
アルマ望遠鏡は東アジア(日本・台湾)・北米(アメリカ合衆国・カナダ)・ヨーロッパの国際共同プロジェクトです。
アンデス山脈中の標高約5,000mの高地砂漠(アタカマ砂漠)に高精度パラボラアンテナを合計66台設置し、それら全体をひとつの電波望遠鏡として観測可能な開口合成型電波望遠鏡として活用するものです。
国際協力で生まれたアルマ望遠鏡プロジェクトのなかで、日本は全体のおよそ4分の1の貢献をしています。
パラボラアンテナは66台のうちの16台、電波をとらえる受信機は10種類のうち3種類を日本が開発しました。
日本製の16台のアンテナで集められた信号を処理するためのスーパーコンピューターも、日本が開発したものです。
アルマ望遠鏡には、日本の最先端技術が惜しみなく投入されています。
現在は約20人の研究者、技術者が日本から出向き、アルマ望遠鏡の運用に携わっているほか、日本国内ではさらなる性能向上に向けた将来開発計画も進めています。
アルマ望遠鏡総建設費は約1500億円で日本の分担は約250億円であり、装置開発や人的な貢献を総合すると貢献割合は全体の1/4となります。
また年間運用経費として、日本は全体の1/4の約30億円を分担しています。
アルマ望遠鏡が加わったことで、事象の地平線望遠鏡の解像度は10倍になり、月面に置いたゴルフボールを見つけられるレベルになりました。
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